最新の年金ニュース~年金制度の改革内容~ 【2012年8月29日】

 

 

平成24年8月10日、社会保障と税一体改革関連法案8法が可決され、年金関連2法案(年金機能強化法と被用者年金一元化法)が成立しました。消費税増税と合わせて実施されるわけですが、私たちの生活に直接関連する年金制度がどのように改革されるのか、主な内容について解説します。

 

(1)年金の受給資格期間が25年から10年に短縮(施行日27年10月)

 

現在の老齢基礎年金の受給資格期間は25年です。保険料納付済期間、免除や特例を受けた期間、昭和61年3月までのサラリーマンの妻などの合算対象期間を合わせて25年を満たさないと老齢基礎年金は1円も受け取れません。

 

受給資格期間を10年に短縮することにより、施行日時点で受給資格期間が10年以上25年未満で無年金となっていた人は、施行日以降の将来分についての年金が受け取れるようになります。また、寡婦年金の受給要件も10年となります。

 

ただし、老齢基礎年金を受け取れる権利ができるということと、満額の年金を受け取れるということは別問題で、受給資格期間が10年では、満額の年金にはほど遠い年金額です。20歳から60歳になるまでの40年間、1ヵ月も欠けることなく、年金を納めた場合に老齢基礎年金は満額(平成24年度は786,500円)です。仮に保険料納付済期間が10年であれば20万円足らず(年額)になってしまいます。
なお、受給資格期間を満たさないため、65歳から70歳まで高齢任意加入する場合は、25年を満たすまで加入することができましたが、施行日以降は10年を満たすまでとなります。65歳以降の高齢任意加入を利用できる人は減少するでしょう。年金額を増やしておきたい人は、65歳までに任意加入しておく必要があります。この制度は無年金者の救済が目的です。保険料を納付するのが10年でよいという意味ではなく、満額の年金を受け取るためには20歳から60歳になるまでの40年間の納付が必要であるという理解が必要です。

 

(2)パートタイマーの厚生年金加入(施行日28年10月)
パートの厚生年金加入基準が緩和されることになりした。現在の加入基準は労働時間および労働日数が正社員のおおむね4分の3で加入となっています。おおよその目安として、週に30時間以上働く場合は加入しなければなりません。今回の改正でこの基準が緩和され、(1)週20時以上働く、(2)月収8,8万円(年収106万円)以上、(3)雇用期間が1年以上、(4)従業員501人以上という要件を満たしていれば厚生年金(健康保険も合わせて)に強制加入となります。

 

従業員の数とは、現行の加入基準でカウントした被保険者対象者が501人以上であることです。従業員規模がこの基準に満たない事業所はこれまでどおりです。ただし、「3年以内に適用範囲を検討する」となっていますので、今後どのように検討されていくのか注目していく必要があります。

 

従業員数とは変化するもので、501人を前後することもあるでしょう。501人を満たさなくなってもパートタイマーが自動的に厚生年金からはずされるというわけではなく、継続する扱いとなります。中小企業で働く多くのパートタイマーは今回の改正でも厚生年金適用外となりますが、企業は将来を見すえて、社会保険加入なしで働くパートタイマー、社会保険に加入し働くパートタイマーと2つのコースを設けて、パートタイマーの時間管理・賃金管理をしていくことが求められるでしょう。

 

(3)産休中の社会保険料免除(施行は法律の公布日から2年以内の政令で定める日)

 

育児休業中の社会保険料は本人分・事業主負担分ともに免除されていますが、産前6週間、産後8週間の休業中も保険料免除となります。年金機能強化法の附則には、国民年金第1号被保険者に対しても、産前産後期間の国民年金保険料の納付義務を免除する措置について検討が行われるようにするという規程が設けられました。

 

(4) 父子家庭への遺族基礎年金拡大(施行日26年4月)

 

現行法では、遺族基礎年金を受け取ることができる人(受給権者)は、子ども(18歳年度末までなどの要件あり)のある妻、子どもに限られています。夫は対象外です。男女間の公平という観点から、施行日以降に発生した父子家庭は遺族基礎年金の対象となります。

 

遺族基礎年金の対象者を「子のある妻」から「子のある配偶者」に改めるということです。しかし、被扶養者である第3号被保険者が死亡した場合には遺族基礎年金を支給しないとし、今後政令において明らかにすることとなっています。第3号被保険者である妻が死亡した場合、夫が遺族基礎年金を受給できないのであれば、「改正」と言えるのかどうか、疑問を残すところです。

 

また、第3号被保険者が死亡した場合に遺族基礎年金を支給しないとするのであれば、夫を第3号被保険者とした妻にも、夫死亡時に遺族基礎年金が支給されないことになりはしないか、今後の政令でどのように定められるのか、見ていかねばなりません。

 

(5) その他の運営改善事項

 

年金機能強化法には運営改善事項が盛り込まれています。そのひとつに、繰下げ支給の取り扱いの見直しがあります。これは年金の繰下げをする場合、繰下げの請求が70歳を過ぎてしまった場合、現在は請求した翌月から支給されていましたが、70歳時点にさかのぼって支給できるとしたものです。

 

その他、未支給年金の請求範囲の拡大、付加保険料の納付期間の延長などいくつかの改善事項がありますが、詳細は省きます。年金強化法案に当初盛り込まれていた低所得者の年金額の加算、高所得者の年金額の調整(減額)は原案から削除されています。

 

(6)被用者年金一元化法

 

年金機能強化法案とは別途、単独で提出された被用者年金一元法では、公務員の共済年金を厚生年金に揃えることを基本にしています。職域部分(共済年金の3階部分)は廃止されます。職域部分廃止後の新たな年金制度については今度検討を行うとなっています。施行日前に共済年金の受給権のある人は、今までどおり支給されます。

 

また、共済年金には厚生年金にはない制度上のメリットがありましたが、それは厚生年金に合わせて解消されることになります。法律は成立しましたが、今後、政令等により定められることも多いので、まだまだ目が離せません。

 

※ こちらの原稿は、ファイナンシャルプランナー向けに執筆されたコラムとなっております。

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≪執筆者紹介≫

 

菅野 美和子(すがの みわこ)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

すがのみわこコンサルティングオフィス所長。女性のための年金相談室主催。
2002年独立開業以来、企業顧問の他、年金セミナーの講師、年金相談員等を
務めてきた。

京都市出身。福岡市在住。
著書 「ねんきん定期便がよくわかる本」((株)BKC)
    「年金、もっと知りたいな」((株)BKC)
    「妻も年金夫の年金」((株)日本生活設計)
    「年金1年生」(主婦の友社)
書籍紹介

<「年金1年生」(主婦の友社)>

59歳の夫婦が退職後の生活考えていくスト―リーで、わかりやすく年金に
ついてお話しています。
家族に起こるさまざまな事件、そして夫婦が何を学んでいくのか、
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家計のつぼ
執筆者:家計のつぼ