高配当株ブームが日本にも到来【2012年9月12日】

 

 

半年ぶりに再び世界同時株高の様相となってきた。欧州中央銀行が無制限で重債務国の国債買い取りを決めたことが原動力だが、米国のQE3(量的緩和第3弾)期待も「不景気の株高」を演出する上で重要な要素と言える。基本的に欧米主要国は超低金利政策の恩恵で、「不景気の株高」が起こりやすい投資環境にある。

 

それを邪魔してきたのが欧州債務危機であり、その邪魔が一時的にせよフェードアウトしつつあるわけで、世界同時株高が起こるのも当然と言えるかもしれない。超低金利政策の副作用として、米国では昨年から配当利回りの高い高配当株の人気が沸騰している。

 

米国の10年国債の利回りが1・7%前後しかないのに対して、医薬品世界最大手のファイザーの配当利回りは3.6%、メルク3.8%、通信大手のAT&T4.7%、通信機器最大手のシスコシステムズ2.8%、GE3.1%といった具合。超低金利の米国債を見限って、高配当株に乗り換える機関投資家が続出しているのだ。

 

これらの銘柄はNYダウを構成する30銘柄に含まれる、米国を代表する大型株だが、株価はいずれも昨年秋から急上昇している。GEやファイザー、メルクはこの1年間で50%前後も上昇。30銘柄中、配当利回りが最も高いAT&Tは40%、シスコシステムズ43%などと超大型株とは思えない急騰ぶりだ。

 

この間にNYダウは28%上昇したが、ダウ採用30銘柄の中でも配当利回りの低い銘柄ほどパフォーマンスが悪かった。配当利回りが0.5%と最も低い銀行大手のバンカメは、この1年間の騰落率がほぼ変わらず、1.3%と3番目に低いアルコアは20%以上も値下がりした。このように、この1年間に限れば、米国では配当利回りが非常に重要な投資指標になっていたことがわかる。

 

●日本では今年6月から人気に火がつく

 

日本でも6月あたりから高配当株がブレイクしたが、これは完全に米国の後追いだ。NTTは6月につけた安値3270円から8月に3800円台まで約18%も上昇した。直近では3600円近辺まで下押したが、それでも配当利回りは4.4%もある。武田薬品は5月下旬の安値から3カ月あまりで16%上昇した。配当利回りは4.9%前後。

 

米国と同様、日本でも医薬品や通信といった景気に左右されない内需系の高配当株が大きく買われた。しかし、日本の高配当株人気は始まったばかりだから、まだまだお宝を発掘するチャンスは残されている。高配当株が人気化した最大の理由は、年金や保険会社など機関投資家の運用利回りの低下が止まらないからだろう。

 

年金は日米ともに債券が運用の中心だが、長期債の利回りが1%台まで下がってくると、さすがに債券以外で安定した高利回りが見込める投資対象を探さざるを得ない。配当利回りに関しては現時点(9月10日)で6%台が最高で、全市場を合わせても19銘柄しかない(一時的な特別配当は除く)。

 

確実に貰える配当利回りに関しては、投資尺度として誰もが重視し、非常に信頼されている証拠だ。最も重要視されてきた投資指標であるPER(株価収益率)は今年に入って急低下していて、最近ではPER5倍台の銘柄でも、さして割安感はなくなっている。

 

PBR(株価純資産倍率)も1倍以下が当たり前で、投資指標としてはあまり重視されなくなってきた。配当利回りはいまイチ押しの投資指標だ。もっとも、安定配当が今後も長く期待できそうな銘柄となると、配当利回りは高くても5%台になる。米国発で世界的に配当利回りを重視する「高配当株ブーム」が起きたということは、日本株の配当利回りの水準は一段と下がると予想される。

 

有力セクターは通信、医薬品、不動産、商社、銀行などだが、不動産セクターの中のパワービルダーと呼ばれる戸建て住宅大手は、配当利回りが非常に高いうえに、超低PER株としても魅力的だ。アイディホーム(3274 JQ)は配当利回り5.0%、PERは3.2倍。タクトホーム(8915)は配当利回り4.5%、PERは5.0倍。

 

ひところなら考えられないほどの超割安株と言える。

 

※ こちらの原稿は、ファイナンシャルプランナー向けに執筆されたコラムとなっております。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

≪執筆者紹介≫
マネーリサーチ 山本 伸
1962年生まれ。マネーリサーチ代表
85年より、経済ジャーナリスト、株式評論家として、株式、金融情報に関する
執筆活動、および講演活動など幅広く活躍していらっしゃいます。
経済情報誌「羅針儀」を主宰。
株式新聞に「山本伸の株式調査ファイル」を連載中。
著書に、『超円安』(たま出刊)、『甦るジパング』(総合法令刊)、
『60分でわかる株のツボ』(北野誠氏との共著。ベストブック)、
『山本伸が選んだ買いの株67銘柄』(宝島)など。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

家計のつぼ
執筆者:家計のつぼ